少し前にWellermanという曲が大ヒットしたのをご存じでしょうか?
育児替え歌などの様々なカバーと登場するほどの人気ソングです。
シーシャンティ(sea shanty)という労働歌の1つで、
19世紀にニュージーランド周辺の海域で活躍した商船の補給船である
ウェラーマン号にちなんで作られた曲です。
この曲は、19世紀後半にオーストラリアやニュージーランドで
広く歌われていましたが、
最近ではTikTokの人気を受けて、世界的に再び注目を集めるようになりました。
この曲の最も有名なバージョンは、
ニュージーランドのフォークバンドThe Longest Johnsが歌ったものです。
彼らのバージョンは、テンポが速く、合唱が美しく、軽快なリズムが印象的です。
また、この曲はしばしばアカペラで歌われ、
海を渡る航海の中で歌われるという歴史的な背景も持っています。
捕鯨に関する楽曲なので今の時代ではややセンシティブなところもありますが
イギリスの植民地であったオーストラリアやニュージーランドの歴史にも
触れることができる学びの多い曲だと思います。
海で働く人々の難しい生活や、長い航海の中で希望を持ち続けることの大切さを表現しています。
今回は2021年に大ヒットのきっかけとなった元郵便配達員のNathan Evansが歌うWellermanを
解説していきます!!
There once was a ship that put to sea
「昔あるところに航海に出た船があった」

※once
「1度」という意味で用いる場合には文末が好まれますが、
「かつて」という意味で用いる場合には文中で用いられることが多いです。
特に一般動詞の前、もしくはbe動詞や助動詞の後ろに
置かれることが多いです。
今回の”there once was ~”は
“once upon a time”と同じ意味で「昔々、あるところに」です。
※to sea
ここでの”sea”は無冠詞で用いられていますね。
“go to the sea”「海に行く」と”go to sea”「船乗りになる、航海に出る」
も連想したいところです。
さらに”put (out/off) to sea”「航海に出る、出帆する」の表現で
成句となっています。
The name of the ship was the Billy O’ Tea
「その船の名前はビリーオブティーだった」

※the Billy O’ Tea
船の名前にはtheが付くので「~号」と訳すこともあります。
また、この”O'”は”of”の短縮形であり
“Jack-o’-Lantern”や”o’clock”と同じ用法です。
(“Jack-o’-Lantern”は英米でアクセントが異なるので要注意)
ちなみに”billy”は「紅茶を入れるポット」の意味もあるので
“the Billy O’ Tea”は「紅茶ポット号」といったところでしょうか。
The winds blew up, her bow dipped down
「風が吹き、船首は沈んだ」

※blow up
「(風が)強く吹く」の意味ですが
嵐や不吉なことが起こるという意味もあります。
ここでは、次の文からも嵐の前触れとして
強い風が吹き始めたと解釈しました。
※dip down
食べ物をソースにディップ(dip)する
という日本語から想像できるように
“dip”は「浸す、浸かる」の意味で
“down”がついて「沈み込む、沈む」という意味です。
O blow, my bully boys, blow (Huh)
「おお、吹けよ、仲間たちよ、吹け」

※O=Oh
※my bully boys
直訳すると「私のいじめっ子たち」となりますが、昔の船乗りの俗語で
同じ船に乗る友人や仲間を指すことがあったことから
船員を示していると考えられます。
Soon may the Wellerman come
「まもなくウェラーマンが来るだろう」

※Wellerman
1860年代に捕鯨船に食糧を供給していたのが
イギリスのWeller兄弟です。
その船で働いていた人たちを”Wellerman”と言いました。
※副詞の強調による倒置
副詞の”soon”が強調されて文頭に置かれたことで、
その後が疑問文の語順になっています。
To bring us sugar and tea and rum
「砂糖と紅茶とラム酒を届けてくれるために」

これらの品物は、
長い月日を海の上で生活する捕鯨船の人々の生活必需品でした。
紅茶が船乗りの飲料水として一般的だったことからも
イギリス植民地であった名残が感じられますね。
ちなみにこの曲が作られたのは
1860年から70年頃とされています。
1840年にニュージーランドはワイタンギ条約を結び
イギリスの植民地となったのですが、
それに反発した先住民のマオリ族と
争いが絶えない時期でした(マオリ戦争)。
One day, when the tonguin’ is done
「解体作業が終わるその日が来たら」

※tonguing
捕鯨でクジラの舌(toungue)を取り出す行為を示し、
クジラの体内に入って取り出すので解体作業を表しています。
We’ll take our leave and go
「休みを取って帰るぞ」

※take one’s leave
「休暇を取る」という意味で用いられる表現です。
この文では”take”と”go”が”and”でつながれていて
“go”は”go home”と解釈しました。
She’d not been two weeks from shore
「彼女は岸から出て2週間も経たないうちに」

※she
船や乗り物、国名などをsheで受ける場合があります。
歴史上の多くの船乗りや為政者は男性であり
その相棒となる乗り物や国家を女性に見立てて
“she”と表現する場合がありましたが、
現代ではこの表現は避けられるようになりitで受けるのが一般的です。
When down on her, a right whale bore
「突然目の前にクジラが現れ、突進してきた」

※[come] down on ~
ここでは”when”の後に主節の主語である”a right whale”と
動詞の”came”が省略されています。
直訳すると「(セミクジラが)船の上に降ってきた」となりますが、
クジラが飛び上がって急に現れ、船の上に影を落としている様子
と解釈しました。
※her
ここでも船が”her”で受けられていますね。
※a right whale
セミクジラというクジラの一種です。
背中の曲線が美しいことから「背美鯨」と表記することもあります。
捕鯨の主な対象で乱獲されてきたことから
1935年には捕獲が禁止され日本でも絶滅危惧種に指定されています。
※bore
「突き刺す」という意味です。
この文では”bored”となるべきところですが
曲のリズムに合わせて文法ルールが無視されたのでしょうか?
The captain called all hands and swore
「船長は全員を呼び集め、誓いました」

※hand
「手」という意味から「人手」「働き手」という意味もあります。
※swore
“swear”の過去形で、「~を誓う」という意味です。
この文では後ろに”that”が省略されて次の文につながります。
He’d take that whale in tow (Huh)
「そのクジラを捉えてやるぞ」

※’d = would
sworeの過去形に合わせて時制の一致により
過去形になったwillですね。
willは強い意志を示します。
※tow
「縄で引っ張る、牽引する」という動詞から派生した名詞で
“take ~ in tow”で同じ意味になります。
※間接話法
この文自体が前の文の”swore”に続く部分で、
その誓った内容になっています。
つまりここでの”he”は”the captain”を示していますね。
Da-da, da-da-da-da
Da-da-da-da, da-da-da-da-da
Da-da, da-da-da-da
Da-da-da-da-da-da
Before the boat had hit the water
「船が水面に着く前に」

クジラの攻撃を受けて船が揺れるか宙に浮くかという状況になり
そこから元の状態に戻る様子を表していて
クジラとの格闘が伺われる場面ですね。
The whale’s tail came up and caught her
「クジラの尾が現れ、船にあたった」

※her
ここでも”her”は船を表しています。
※catch
体の一部や人を目的語にとると、
「つかまえる」という意味から少し変化して
「あたる」という意味になることがあります。
All hands to the side, harpooned and fought her
「全員が一斉に船の端に行き、銛(もり)を打ち、戦った」

口語英語では主語と述語のあいだに間を置くことがあり
その影響でこの文でも主部と述部の間にカンマがあります。
ただし、書き言葉ではこの表記は誤りとされています。
ちなみに”harpoon”はフォートナイトでもおなじみの武器ですね。
※her
今度の”her”は船ではなくクジラを表しています。
代名詞は難しいですね。
When she dived down low (Huh)
「するとクジラは深く潜ってしまった」

※when
この”when”は”and then”の意味で使われています。
受験英語でも” ,when”=”and then”は要注意ですね。
Soon may the Wellerman come
To bring us sugar and tea and rum
One day, when the tonguin’ is done
We’ll take our leave and go
No line was cut, no whale was freed
「ロープは切れず、クジラも逃げてはいなかった」

※line
先ほどの”harpoon”はロープにつながった銛を
射出する道具でした。
つまり、クジラに銛が刺さって、そのロープが
まだ切れていない状況を表しています。
※動詞のfree
「解放する、自由にする」という意味です。
直訳すると「鯨は解放されていなかった」となりますね。
The Captain’s mind was not of greed
「船長の心は貪欲ではなかった」

※of + 抽象名詞
これは受験英語でもよく見かけますね。
この形になることで形容詞として機能するので
“of greed”は”greedy”と同じ意味になります。
And he belonged to the whaleman’s creed
「彼は捕鯨者の信条に従っていたのだ」

前文の”not”に続いていますね。
“not ~ but …”はよく知られていますが
同じような使い方で”not ~ and …”があることも
知っておきたいところですね。
さらに、お気づきでしょうか?
“freed”, “greed”, そして”creed”と韻を踏んでいるんです。
このあたりの言葉選びは音楽ならではですね。
She took that ship in tow (Huh!)
「クジラはその船を引っ張っていった」

※she
また”she”が出てきましたね。
今度の”she”は後ろに「船を引っ張っていった」とあるので
今度はクジラですね。
Soon may the Wellerman come
To bring us sugar and tea and rum
One day, when the tonguin’ is done
We’ll take our leave and goDa-da, da-da-da-da
Da-da-da-da, da-da-da-da-da
Da-da, da-da-da-da
Da-da-da-da-da-da
For forty days, or even more
「40日間以上にわたって」

※or (even) more
「~以上」という意味で、”even”があることで”more”が強調されていますね。
The line went slack, then tight once more
「ロープはゆるんだり、再び引っ張られたりした」

※slack
“tight”の反対で
「(ロープが)ゆるむ、(人が)なまけた」という意味の形容詞です。
※once more
“once again”と同じ意味で「ふたたび」という意味です。
All boats were lost, there were only four
「すべてのボートが失われ、わずか4人しか残っていなかった」

※boat
ここでは”ship”ではなく”boat”になっています。
“ship”は”boat”よりも大きな船を表し、
そこに小型の”boat”が積載されていることもあります。
But still that whale did go (Huh)
「しかし、それでもクジラは進む」

※did go
動詞を強調するときにはdo/does/didを用います。
また、”go”は「そのまま進む」という意味です。
Soon may the Wellerman come
To bring us sugar and tea and rum
One day, when the tonguin’ is done
We’ll take our leave and go
As far as I’ve heard, the fight’s still on
「聞いた限りでは、その戦いはまだ続いている」

※as far as ~
「~する限りは」という意味で程度を示します。
“insofar as”という言い方もありますね。
“in so far as”と同じく書き言葉で用いられます。
似たような表現の”as long as”は条件や時を示すので
注意が必要です。
※be on
「続いている」という意味です。
この文から時制が現在になっているところも
注目ポイントですね!!
The line’s not cut and the whale’s not gone
「ロープは切れず、クジラも逃げていない」

※’s = has
この文では現在完了が用いられており
今もなおこの状況が続いていることを表しています。
The Wellerman makes his regular call
「ウェラーマンは定期的に呼びかけている」

※make a call
「電話をかける」という意味ですが、
ここでは「呼びかける」と訳しました。
また、「訪問する」という意味もありますね。
“make the call”で「決断を下す」という用法もあります。
To encourage the Captain, crew, and all (Huh)
「船長、乗組員、そしてすべての人々を励ますために」
Soon may the Wellerman come
To bring us sugar and tea and rum
One day, when the tonguin’ is done
We’ll take our leave and goSoon may the Wellerman come
To bring us sugar and tea and rum
One day, when the tonguin’ is done
We’ll take our leave and go
音楽に詳しいわけではありませんが、
多くの楽曲はハッピーエンドなりバッドエンドなりの結末が
最後に描写されています。
この曲は、クジラに襲われ、捕えようとして、
その後捕まえることができたのかどうかは不明なまま終わりを迎えます。
当時の緊張感を疑似体験するような
ドキドキが止まらない曲ですね。
歌詞の内容を知ってもう一度聞いてみると
また印象が変わるかもしれませんね。
参考サイト
https://folksong.org.nz/soon_may_the_wellerman/index.html
https://nzhistory.govt.nz/
https://mashable.com/article/wellerman-sea-shanty-history
https://theconversation.com/the-viral-wellerman-sea-shanty-is-also-a-window-into-the-remarkable-cross-cultural-whaling-history-of-aotearoa-new-zealand-153634
著作権に関する表記
Writer(s): Nathan Evans, David Phelan, Alexander Oriet
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